3.ステム製品(試料支持膜やマイクログリッド)ご利用上の注意

3-1 得られた結果の保証と責任

 マイクログリッドや支持膜の作製にあたっては出来うる限りの良品をお届けできるよう最大限の努力をしておりますが、使用材料の均質性確保が困難であったり、製作環境や作業者熟練度がまだまだ不十分なところもあり、残念ながら理想的な製品(破れやしわが無く、また、ゴミの付着や不純物の混入も無く、厚さが均一の支持膜や均一な孔径のマイクログリッド)を提供できるまでには至っておりません。

 従いまして、当社のマイクログリッドや支持膜をご利用いただいて得られた観察結果の解析におかれましては、上記のような製品状態であることをご理解の上でご判断くださるようお願いしますとともに、得られました結果につきましてはいかなる保証もできませんこと、ならびにいかなる責任も負えませんことをご了解ください。

3-2 使用可能な孔数の割合(保証孔率)と不適合品の対応

 支持膜やマイクログリッドの作製にあたっては万全を期していますが、残念ながら上記のように理想的な製品の作製は困難です。
 使用する材料につきましては、異物・コンタミなどの無いことが保証される特別な高精製材料や高純度材料を利用するのが理想ではありますが、現実には一般に入手が可能な範囲の中からより良い材料を選択して利用しているという状況です。そのため、製品には作製の過程でコントロールできない不具合(たとえば、膜の剥がれ、破れ、しわ、たわみ、部分的な膜厚変化、ゴミの付着、コンタミの付着など)を避けることができませんことをご理解ください。

(保証孔率と不適合製品への対応)
 ステムでは、各々の支持膜およびマイクログリッドにつきまして外観的に使用可能(破れの無い)な孔数の割合(保証孔率)を当社ホームページや各種資料に明示しています。保証に満たない不適合製品が混入していた場合は、交換により対応させていただきます。
 交換につきましては、納品後に適切な保管管理をしていただいた上で、2ヶ月以内のご連絡に対して対応させていただきます。(これ以降のご連絡に対しましては交換対応ができませんことをご了承ください。)

(製品ご利用上の注意事項)
 支持膜やマイクログリッドは“生もの”とご理解いただき、ご購入後3ヶ月以内(表面親水性支持膜は1ヶ月以内)のご使用をお勧めします。
この期間、製品を室内に放置した状態で保管されますと支持膜の劣化が生じて保証孔率を維持することが困難になる場合があり、ご利用にあたってご不満が出たり、ご使用に支障をきたす場合がありますのでご注意ください。
 そのため、1ヶ月程度の期間であればデシケータ内で製品を保存してくださるようお願いします。また、1か月以上の長期間にわたって製品を保管される場合には、真空恒温槽あるいは不活性ガス雰囲気の恒温槽内で定温保存(15~20℃の間の一定温度)されますようお願いします。

3-3 保存法について

1.製品ご購入後は上記(3-2)で説明しましたようにデシケータ内に保存してください。

2.1か月以上の長期間にわたって製品を保管される場合には真空恒温槽あるいは不活性ガス雰囲気の恒温槽内で定温(15~20℃の間の一定温度)
  保存してください。

3.支持膜がグリッドから剥がれたり、膜に破損やしわが発生したりなどの不具合は、保管中の温度変化(日間、週間、月間の温度差)が原因で
  起こります。

4.コンタミの付着は保管している雰囲気ガスの吸着が一因となります。こうした悪影響を防ぐために適切な環境で製品を保管してください。

3-4 TEM用支持膜のSEMやSTEMでの使用について

 TEM用に作製された支持膜は、TEMよりも低加速のSEMやSTEMにも基本的には使用可能と思われますが、チャージアップも発生し易く、わずかな膜厚のムラや低密度の異物の存在、また、部分的結晶化などにより、高加速のTEM観察時には見られない異常なコントラスト(注1)が膜内に発生する場合があります。また、装置内の入射電子線経路途中で発生する各種信号電子に基づく様々なコントラスト、ならびに支持膜を通過した電子が支持膜裏側に位置する試料支持台や電子線通路を照射することにより発生する反射電子や二次電子情報が観察像と重なり、異常な観察結果(注1)を生む場合があります。こうしたSEM特有の現象を十分に認識いただき気を付けてご使用ください。

(注1)異常なコントラストや観察結果の発生は、使用する装置の違いや使用条件のわずかな違いにより変化します。

3-5 ステム製の支持膜について

1.ステム製支持膜は、2-2に記載したような理想的な支持膜ではなく、またユーザーの皆様の個別のご要望にお応えできるようなBESTな支持膜でもありません。「それぞれのユーザーにとってのBESTな支持膜」は「使用者(ユーザー)が使用目的に合った支持膜を理想的な材料を基に作製するべき」であると弊社は考えています。そのような意味合いから、STEM製支持膜はユーザーの皆様にとっての「次善のBETERな支持膜」としてご利用いただける製品として提供いたしております。

2. なぜ「次善のBETERな支持膜」かと言いますと、(ⅰ)材料にはごく普通の市販材料を用いていること、(ⅱ)製作環境のクリーン度も特別に高くはないこと、(ⅲ)作製者は一般の白衣を着用の上で作業していること、そして(ⅳ)膜厚も弊社が標準と決めた出来上がりになっていること、などが挙げられます。従って、お客様の使用目的に合致したBESTな支持膜ではないものだと理解しているのです。

3. 製品にはゴミ、異物、欠陥、膜厚不均一、一部結晶化、アーティファクトが少なからず存在してしまいますため、グリッド上に貼られた支持膜の使用可能保証孔率は決して100%ではありません。支持膜作製の難易度により、また、支持膜の種類により定めたそれぞれの製品の使用可能保証孔率は当社ホームページや各種資料に明示されていますので参考にしてください。保証孔率を満たさない不適合品につきましては3-2の記載内容に従って対応させていただきますので、弊社又は販売店までお申し出ください。

4. カーボン支持膜やカーボン補強(コーティング)を施した製品には、少なからずカーボン蒸着源由来のカーボン微粒子が付着いたしますので、ご承知の上で使用ください。

5. 当社のマイクログリッドや支持膜をご利用いただいて得られた観察結果の解析におかれましては、上記のような製品状態であることをご理解の上でご判断くださるようお願いします。また、得られた結果につきましてはいかなる保証もできませんこと、そして、製品使用に伴う不具合などの発生につきましてはいかなる責任も負えませんことをご了解ください。

3-6 使用倍率について

1.倍率を高くした場合、一般的には照射電子線密度を大きくする(電子線を絞る)必要があります。
  そのため特に高分子材料を用いた薄膜は影響を受け、条件によっては膜の破損が生じます。

2.使用可能な最大倍率は、膜の種類だけに依存するものではなく、試料の種類や状態、観察方法、観察条件によっても変わります。
  そのため、予備実験を通して、どのくらいの倍率まで高めることが可能であるかを事前にご確認ください。

3-7 使用加速電圧について

1.ほとんどの支持膜とマイクログリッド製品は、加速電圧75~200 kVのTEM観察に適します。

2.実際の使用可能な加速電圧範囲は、膜の種類だけに依存するものではなく、試料の種類や状態、観察方法、観察条件により変わります。
  そのため、予備実験を通して、適切な加速電圧範囲を事前にご確認ください。

3-8 耐熱性について

1.耐熱性をうたっている支持膜あるいはマイクログリッドは、真空環境下において耐熱性を有することを意味します。
  空気中、あるいはその他のガス中での加熱時には適用されません。
  各種ガス雰囲気下でご利用の場合は、試行の上、使用の可否をご確認の上でご使用ください。

2.昇温スピードは3~5℃/分程度で試行し、支持膜の破損が生じないことなどをご確認の上、ご使用ください。

3-9 耐酸性・耐アルカリ性について

1.薬液中に懸濁している試料や、薬液表面に浮遊している試料のサンプリングには、薬品に侵されない支持膜やグリッドの使用が必要です。

2.試料自身と試料作製雰囲気(環境)を考慮して、それらの影響を受けない支持膜、マイクログリッド、ならびにグリッドを選択してください。
  一般的には支持膜材料と使用グリッド(メッシュ)の材料とにより、薬品耐性は決まります。ご使用の前に材料の確認が必要です。

3.支持膜の薬品耐性については別表〝各種プラスチック支持膜の特性″に概略を説明してありますが、目安であり保証する内容ではありません。
  本格的な使用の前に必ず予備実験をして、ご使用の薬品に対する製品の耐性をご確認の上、ご使用ください。

3-10 耐有機溶媒性について

1.有機溶媒中に懸濁している試料や、有機溶媒表面に浮遊している試料のサンプリングには、有機溶媒に侵されない支持膜やグリッドの使用が必要 です。

2.試料自身と試料作製雰囲気(環境)を考慮して、それらの影響を受けない支持膜あるいはマイクログリッドを選択して下さい。

3. 支持膜の薬品耐性については別表〝各種プラスチック支持膜の特性″に概略を説明してありますが、目安であり保証する内容ではありません。
  本格的な使用の前に必ず予備実験をして、ご使用の薬品に対する製品の耐性をご確認の上、ご使用ください。

3-11 分析時のご注意について

 製品に使用する材料に含まれる元素コンタミを予期することは困難であり、また、製造工程中に入り込む元素コンタミを完全に避けることもできませんので、お客様の試料の元素分析を目的として弊社製品の支持膜やマイクログリッドをご利用いただく前に、必ず、試料を載せずに支持膜あるいはマイクログリッドだけを対象として元素分析を行い、事前にどのような元素がどの程度含まれているのかをご確認ください。

3-12 グリッドホルダーへの製品収納について:表裏の向きに関する出荷規定について

1.支持膜やマイクログリッドを貼ったグリッドや支持膜上に標準試料/調整試料を載せたグリッドは、支持膜貼り付け面がSTEMグリッドホルダーのクボミに向くように収納して出荷いたします。


2.出荷時のグリッドケース内のグリッドの状態を以下に示します。

               25枚入りの例                         10枚入りの例

3-13 当社製品のご使用に関する当社の責任について

1.一部化学物質を使用した製品や、鋭利な部分をもつ部品・製品を提供しておりますが、当社製品をご使用いただくことによって発生した病傷害につきましては、一切の責任を負いかねますのでご承知ください。

2.また、当社製品を利用して得られた結果に対しても、当社は一切の保証はできませんし、責任も負えませんことをご承知ください。